深夜、路子は、恋人・植田との情事の余韻を身体に残しながら家路へと急いでいた。その道すがら、一度行ったことのある中古車販売店で働く谷口から声をかけられる。家まで送るという誘いを断って歩を早める路子だったが、突然、谷口に背後から襲いかかられ、道から離れた空き地でレイプされ…。 物語の初めから終わりまで、田中裕子の表情が本当に素晴らしい。自然な演技、いやそれ以上の高等な演技で、この突然の悲劇に見舞われた女性の物語をきめ細かく軽やかに表現しています。和姦を主張され、性遍歴まで引き合いに出される憎々しい屈辱的な裁判を軸としながらもそれだけに終わらず、死ぬほど恋した妻子ある男との切ない過去のエピソードも短いが効果的に挿入され、矢萩路子というひとりの女性の生き方、心情もきちんと伝わってきて共感が持てます。特に酒場で踊るシーンは圧巻。色んな気持ちや女性ということを開放するかのようなあの叫びのような踊りは本当に素敵。男も事件も軽々と飛び越えての笑顔のラストとともに、ヌードになることなんか取るに足らない田中裕子の気高さに脱帽。風間杜夫、津川雅彦も好演。題名で惑わされてはいけません。東陽一監督らしい繊細な目線で描かれた上質な女性映画です。
